2019/3/8 名古屋ウィメンズマラソン2019展望B
岩出が「佐藤悠基さんのように」と積極的な走りを宣言
唯一のMGCファイナリストだからできるレースを

 8日に行われた記者会見で、積極さを前面に出したのが岩出玲亜(アンダーアーマー)だった。今回のマラソンで達成したいこと、テーマは? という問いに対し、次のように応えた。
「自分の壁をぶち破りたい。東京マラソンの佐藤悠基(日清食品グループ)さんのような走りをしたいです」
 佐藤は最後は大きくペースダウンしたが、超ハイペースの先頭集団に日本人選手で最後まで食い下がり、30kmは1時間29分22秒と、大迫傑(ナイキオレゴンプロジェクト)が日本記録を出した時の30km通過タイムを上回った。
「MGC出場権を持っていたからできたことだと思いますが、リスクをおそれず、日本記録も狙えるくらいに攻めた走りをされてて、すごく格好良く見えました。タイムを出すことはできませんでしたが、MGCに向けて得るものがたくさんあったように見えました。私も今回、佐藤さんのように走りたい」
 岩出も今大会で唯一、MGC出場資格を持つ。先頭集団のペース設定はまだ決まっていないが、5km毎を16分50秒と17分10〜15秒の2つになるのではないか、という情報もある(繰り返すが最終決定ではない)。
 16分50秒なら2時間22分前後のタイムが出る。後半の頑張り次第では2時間21分00秒のMGC派遣設定記録(MGC2・3位の場合に優先的に選考される)も視野に入る。

 岩出がここまで積極的なレースを宣言したのは、停滞する自身を鼓舞する意味合いもあるのだろう。初マラソンで10代最高記録を出し、3回目の16年名古屋で、リオ五輪代表には届かなかったものの、2時間24分台へ記録を伸ばした。

岩出のマラソン全成績
回数 月日 大会 順位 日本人 記 録
1 2,014 11.16 横浜国際女子 3 2 2.27.21.
2 2,015 3.08 名古屋ウィメンズ 8 5 2.29.16.
3 2,016 3.13 名古屋ウィメンズ 5 4 2.24.38.
4 2,016 9.25 ベルリン 4 1 2.28.09.
5 2,017 3.12 名古屋ウィメンズ dnf dnf 17km
6 2,017 11.12 さいたま国際 5 1 2.31.10.
7 2,018 3.11 名古屋ウィメンズ 4 2 2.26.28.

 だが、その後の岩出は少しくすぶっている印象がある。16年ベルリンで4位に入り、昨年の名古屋も4位(日本人2位)でMGC出場権は取ったが、以前ほど勢いはない。
 その現状を打破するため、昨年は長期のケニア合宿も敢行した。女子なので現地のアテンド役の日本人は付けたが、コーチは帯同せず、現地での行動は岩出が判断した。
 1月にはケニア合宿について次のように話している。
「ケニアで少しは殻を破れたと思います。思い通りに行かないことが多々ありました。ペースメーカー役の人がお願いした通りに走ってくれなかったり、時計を持っていなかったり。同じメニューを頼んだはずなのに別のものが出てきたり、挙げ句にはご飯に虫が入っていたり。そういうものだと割り切って考えられるようになりました」

 1月の大阪ハーフマラソンでは1時間09分46秒と、自己記録に1秒と迫った。自己記録の1時間09分45秒は2013年12月にマークしたもので、現在もU20日本記録として残る。当時は勢いで出したが、今回はマラソンへの練習の一環としての出場という状況で出した。

 5年の歳月で積み上げてきたものが、当然ある。大人になった岩出が殻を破る時が近づいている。


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